The Master Musicians of Joujouka
ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカ

「我がためにある音楽は聴いた瞬間にわかるというもの」by ブライアン・ガイスン(アーティスト)

「4000 year old-Rock’n Roll Band」by ウィリアム・バロウズ(作家)/ティモシー・リアリー(心理学者)

北アフリカ、モロッコ王国の北部、リフ山脈南に位置するアル・スリフ山、ジャジューカ村には、アル・スリフ族のスーフィー音楽家たち‘ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカ’(アラビア名:マレミーン・ジャジューカ)によって、1300年以上も前から時代を超えて今日も演奏されている音楽があります。息子たち、甥たち、村の子供たちへと、時代から時代へと村で守られ受け継がれてきたその音楽は、世界中のミュージシャン、アーティスト、作家など多くの人々を魅了し続けています。
村には三種類の音楽があり、その中のブゥジュルード伝説が起源の音楽は、ダブル・リードの楽器‘ガイタ(ライタ)’とヤギ革の両面タイコ‘ティベル’というシンプルな楽器編成で演奏されますが、大勢で演奏されるため、うねるようなリズムとグルーヴを持ち、とてもパワフルで一度聴いたら忘れられません。
ジャジューカが世界に広まる最初のキッカケは、ジャジューカ出身の母を持つモロッコ人画家モハメッド・ハムリが、イギリス/カナダ人アーティストのブライアン・ガイスンを村に連れて行った1950年代初頭まで遡ります。 ジャジューカにすっかり魅了されたガイスンはハムリと一緒に次々とジャジューカを西洋のオーディエンスに紹介していきます。
60年年代初頭ジャジューカを訪れたアメリカ人作家ウィリアム・バロウズは、著書「ソフト・マシーン」(61年)にてジャジューカについて触れ、彼のショートフィルム「Towers Open Fire」(64年)では音楽にジャジューカを起用しています。
ガイスンやバロウズを通し、ジャジューカはビートジェネレーションと深く関わっていました。
68年、ローリング・ストーンズの創立者/ギタリストであるブライアン・ジョーンズによって、その後のジャジューカの歴史を大きく変える出来事が起こります。ジャジューカに魅了された彼は、村で現地録音したテープをロンドンに持ち帰り、編集や加工を加えアレンジしたアルバムを完成させました。
69年、残念ながらリリース前に彼は不慮の事故死を遂げますが、このアルバム「Brian Jones Presents The Pipes of Pan at Joujouka」は、彼の死後71年にローリング・ストーンズの自身のレーベル第一弾として発売されました。このレコードの発売はジャジューカを世界的に知らしめ、その後世界中からミュージシャンを村に引き寄せることになりました。
73年には、フリージャズの巨匠のひとり、オーネット・コールマンが村に滞在し、マスターズとセッション。この曲「Midnight Sunrise」は76年に発売されたアルバム「Dancing in Your Head」に収録されています。 この曲は、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「裸のランチ」(91年)で使われています。
2008年、ブライアン・ジョーンズの村訪問40周年を記念して「The Master Musicians of Joujouka Brian Jones 40th Anniversary Festival 2008」がジャジューカ村で開かれました。ブライアン・ジョーンズの元ガールフレンドでありモデルのアニタ・パレンバーグも参加したこのフェスティバルは大成功を収め、それ以降も毎年村で、世界限定50名の「The Master Musicians of Joujouka Festival」として開催されており、ブライアン・ジョーンズやバロウズたちが村で体験した同じ環境でジャジューカの生演奏を聴きたいと、今日も世界中のジャジューカ・ファンが参加しています。
リフ山脈の小さな村の音楽家たちによって1300年以上も変わらず演奏し続けられているこの生粋の音楽は、歴史的に見ても単にワールド・ミュージックというジャンルにとどまらず、文学、映画、アート、ジャズ、ロックという広いジャンルにファンを持ち、今日も絶大なる敬意と人気を集めています。